1991年(平成3年)4月5日発行 「月刊リゾート情報」
セカンドハウス・テクニック
「資金計画からライフスタイルまで」

プロの目で選んだ土地に独創性ゆたかな家を建て、
   奥三河の大自然に囲まれて過ごすのどかな日々、
 田舎暮らしの仕掛人が実践する悠々自適ライフ

  「川のほとりの200坪の土地が彼をカントリーライフに導いた!」

 豊川市にある不動産会社に勤務する福田健史さんは、仕事で奥三河一帯の物件を扱うと同時に、カントリーライフ普及のためにPR誌「田舎専科」なども発行している。そんな彼が自ら田舎暮らしを実践することになったのは、2年前のことだ。 「200坪で300万円という格安の土地があったんです。川添いの土地で、増水で年に一回水のつく土地の為、安かったのですが、私には二度とお目にかかれないような素晴しい環境に思えたんですよ。」  それまで何百という物件を見てきたプロの目にかなったその土地は、鳳来町の布里というところにあり、周囲を緑に囲まれ、目の前を寒狭川の清流が静かに流れる。福田さんはその風景に完全に心を奪われてしまったのだ。 「10年に一度くらいは、川が氾濫して家が濡れる心配があるというんですが、結局畳と家財道具が犠牲になるくらいでしょう。そう思えば、電気製品なんて10年もたてば普通買い換えますからね。」  危険といわれた土地でも、ちょっとした発想の転換で素晴しい土地になる。家を建てる時にも、福田さんは独自の発想法で実にユニークなプラン作りを進めた。 「まず家の向きは川のある東向きにしました。昼過ぎの陽当りより、朝日と川の眺望をいかすということを最優先させたかったんです。 こういう環境ですから、非日常性をなるべく楽しみたかった。そのために個室をなくして、リビングを思いきり広く取る、というような大胆な間取りを心がけました」  さらに内装にも様々な工夫の後が見られる。浴室は夜空と川が眺められるように温室で作った。リビングの窓も大胆なくらいに広く取ってある。これももちろん川を眺めるため。居住スペースを広くするために廊下をなくし、個室も設けていない。そして、何より個性的な点は、材料面。“安い材料を安っぽく見せない”のが福田さんの腕の見せ所だという。 「壁はすべて米板ベニアだけに統一、畳にはへりをつけない、瓦もセメント瓦と呼ばれる一番安いヤツにしたんですよ。」  セメント瓦は機能的には問題ないが、重量感に欠けると敬遠されている。しかし、そんな考えは見栄でしかないと、福田さんは笑い飛ばす。屋根材は雨漏りしなければいい、と豪快にいってのける。 「材料にカネをかければイイ家だと自己満足になっても合理的ではないと思うんです。もちろんただケチればいいというわけではなく、かけるべきところにはかけるべきだということですね。たとえば、この家なら冬は冷え込むから、各室に床暖房やセントラルクリーナーを配置して健康な家にするという具合にです。」