平成7年3月6日「日本経済新聞」記事抜粋

 『田舎物件』のみ紹介します。
     月刊情報誌も発行会員層幅広く

『昨秋、東海地域では初めて田舎の不動産だけを専門に扱う会社が愛知県鳳来町に誕生した。「あくせくした都会より田舎暮らしを楽しみたい」-設立者の福田健史さん(51)は、そんな田舎暮らしの希望者を応援したいという。自らも奥三河の山間部に暮らす”実践者”で、田舎暮らしに関するアドバイスもしている。相談に来る人は老年夫婦から二十才代の若者までと年齢層も幅広く、田舎暮らしに興味を持つ人は予想以上に多いという。』

「近所付き合い大切」

 福田さんが長年務めた不動産会社を辞めたのは昨年の秋。当時の肩書きは専務取締役で、会社では大黒柱だった。「田舎暮らしを始めて人生観が大きく変わったから」だという。
 豊川市の市街地を離れ、奥三河の山間部に居を構えたのは6年前。移った当初は「仕事以外に何もできないことを知らされがく然とした」という。枝打ちや里道の補修、祭りの準備・・・。村人が総出で行う行事では、それぞれの準備を得意とする人が出てきて指揮をとった。
 「人付き合いが苦手なので田舎暮らしがしたいと相談に来る人もいるが、実際に田舎で暮らすと近所付き合いは一番大切」と福田さんは話す。
 田舎暮らしを始めたのを機に会社に田舎不動産部門を作り、田舎物件の情報を満載した「田舎専科」を発行した。毎月発行する会員向けの情報誌だが、反響は大きく、現在三千人を数えた。不動産不況の影響で会社が田舎不動産部門を廃止すると福田さんはあっさりと退社、田舎不動産だけを扱う不動産会社「奥三河カントリー」を設立した。
 事務所は鳳来町の自宅に構え、実際の田舎暮らしを見てもらうようにしている。

 必ず立地環境確認

 福田さんは毎月50件ほどの物件を自分の車で見て回る。紹介する物件は必ず自分で足を運び、立地環境を確かめる。「安さだけを求める人もいるが、あまり安すぎる物件はそれなりの欠点があることが多く注意が必要」とアドバイス。
 「価値観の多様化がいわれて久しいが、今でも子供時代にはよりいい学校に、大人になれば大きな会社に就職して昇進を目指すという状況は変わっていない」という福田さんは、21世紀には田舎不動産会社を閉めて、今度は趣味の陶芸に挑戦したいと話している。